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Japanische Klassiker mit Furigana

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ひとりふたやく

一人二役

江戸川 乱歩

Lesen Sie 一人二役 (ひとりふたやく) von 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 6.740 Zeichen · 14 Bildschirme

Aozora Bunko

細君はともすれば憂欝になった。恐らく彼女は姿を見せぬ男のことを、諦め兼ねているのに相違ない。Tはそれを見るのがつらかった。と同時に、それ程心にかけている男というのが、実はもう一人の自分であることを考えると、それは満更嬉しくないこともなかった。

一層一伍一什を打開けて了おうか、だがそうすることは、何となくいやだった。一つは余りに馬鹿馬鹿しい自分の行為が恥しくもあったし、それに、もう一つは、実はこれが最大の原因なのだが、生れて始めて経験した、忍ぶ恋路の身も世もあらぬ楽しさを、Tはどうにも忘れ兼ねた。彼は、そこに、本当の恋を見出した様に思った。本来のTに対しては、世間並の女房に過ぎなかった彼女が、その心の奥底にあの様な情熱を隠していようとは。Tは全く意外であった。そして逢瀬が重なれば重なる程、そのことは明かになって行った。今更ら、あれは狂言だったなどとどうして云えるものか。

併し、この二重生活をいつまでも続けることは、煩わしいばかりでなく、細君に真相を悟られる虞があった。これまでは、いつも夜更けを選んで、暗い電燈の下や、多くはその電燈さえもない闇の中で逢っていたのだし、一方明白なアリバイが用意してあったから、まず安全であったけれど、そんな異常な会合がそうそう続けられるものではない。