Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

ja-reading.com

Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.

ひとりふたやく

一人二役

江戸川 乱歩

Lesen Sie 一人二役 (ひとりふたやく) von 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 6.740 Zeichen · 14 Bildschirme

Aozora Bunko

もうしめたものだ。

そこで、Tは、細君が十分寝込んだ折を見すまして、ソッと床の中から這い出した、手早く着物を着ると、例の銀のシガレット・ケース丈を枕許へ残して、音のしない様に、家から抜け出し、それも、まともな入口からでなくて、庭の塀をのり越したのだ。もうその時分車なんかありやしない、テクテクと、十何町の道を、行きつけの待合へ歩いた。酔狂な男もあったものだ。

さて、翌朝だ。細君、目を醒して見ると、一緒に寝ていた筈の夫が、も抜けのからだから、少なからず驚いた。家中探して見たが、どこにもいない。寝坊の夫が、この早朝外出する筈もなし、妙だなと思いながら、ふっと気がついたのは、枕許のシガレット・ケースだ。一向見慣れぬ品だ。夫が始終持っているのとは違う。で、手にとって調べて見ると、まるで心当りのないイニシアルが刻んである。中の巻煙草まで、夫の常用のものとは違っている。夫がどこかで取違えて来たのかとも考えて見たが、さて、何とやら腑に落ちぬ。と、思出すのは、昨夜の髭の一件だ。さあ、細君どれ程か心配したことであろう。

そこへ、Tが、昨夜家を明けたのがきまりが悪いという様な、殊勝気な顔つきで帰って来た。