Japanische Klassiker mit Furigana
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ひとつぼかん
一坪館
海野 十三
Lesen Sie 一坪館 (ひとつぼかん) von 海野 十三 (うんのじゅうざ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 27.902 Zeichen · 56 Bildschirme
こんな能率のいい展覧会場は、はじめて見たよ」
そのとおりだった。四方の壁という壁が、すっかり絹地へかいた日本画でうずまっている。草花の画がある、かわいい子供の人物画がある、花のさいた田舎の風景画がある。
「ああ、これはたのしいね。画なんて、こんなきれいな、いいもんかな」
「戦争に夢中になっていて、こういう世界をすっかり忘れていたよ」
「こうして画を見ていると、敗戦のくるしさを忘れるね」
「おいおい、見るだけじゃ悪いよ。僕とちがって君は金を持っているんだろう。一枚買っていけよ」
「あんなことをいっているよ。ぼくだって金はあまり……この画は非売品だよ。売らない画なんだ。見たまえ、ねだんの札がついていないじゃないか」
「いや、おのぞみでございましたら、お売りもいたします。ねだんは、こっちに分っておりますから……」
そういって顔を出した人物があった。かぼちゃにもじゃもじゃ毛をはやしたような目の美しくすんだ男――犬山画伯だった。この画をかいた本人の犬山画伯だ。
「いや、今日はねだんをおしえていただかなくともけっこうです。ごめんなさい」
二人の客は、あとからどかどかとあがって来たあたらしい一団の客といれかわりに、笑いながら、下へおりていった。