Japanische Klassiker mit Furigana
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ぼくのぼうしのおはなし
一房の葡萄 他四篇
有島 武郎
Lesen Sie 一房の葡萄 他四篇 (ぼくのぼうしのおはなし) von 有島 武郎 (ありしまたけお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 18.712 Zeichen · 39 Bildschirme
「どうもあれがこの本の中にいないはずはないのだがな」
とやがておとうさんがおかあさんに仰有います。
「いいえそんな所にはいません。またこの箪笥の引出しに隠れたなりで、いつの間にか寝込んだに違いありません。月の光が暗いのでちっとも見つかりはしない」
とおかあさんはいらいらするように泣きながらおとうさんに返事をしていられます。
やはりそれは本当のおとうさんとおかあさんでした。それに違いありませんでした。あんなに僕のことを思ってくれるおとうさんやおかあさんが外にあるはずはないのですもの。僕は急に勇気が出て来て顔中がにこにこ笑いになりかけて来ました。「わっ」といって二人を驚かして上げようと思って、いきなり大きな声を出して二人の方に走り寄りました。ところがどうしたことでしょう。僕の体は学校の鉄の扉を何の苦もなく通りぬけたように、おとうさんとおかあさんとを空気のように通りぬけてしまいました。僕は驚いて振り返って見ました。おとうさんとおかあさんとは、そんなことがあったのは少しも知らないように相変らず本棚と箪笥とをいじくっていらっしゃいました。僕はもう一度二人の方に進み寄って、二人に手をかけて見ました。