Japanische Klassiker mit Furigana
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ぼくのぼうしのおはなし
一房の葡萄 他四篇
有島 武郎
Lesen Sie 一房の葡萄 他四篇 (ぼくのぼうしのおはなし) von 有島 武郎 (ありしまたけお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 18.712 Zeichen · 39 Bildschirme
面白いように登って行きます。とうとう帽子の所に来ました。僕は力みかえって帽子をうんと掴みました。帽子が「痛い」といいました。その拍子に帽子が天の釘から外れでもしたのか僕は帽子を掴んだまま、まっさかさまに下の方へと落ちはじめました。どこまでもどこまでも。もう草原に足がつきそうだと思うのに、そんなこともなく、際限もなく落ちて行きました。だんだんそこいらが明るくなり、神鳴りが鳴り、しまいには眼も明けていられないほど、まぶしい火の海の中にはいりこんで行こうとするのです。そこまで落ちたら焼け死ぬ外はありません。帽子が大きな声を立てて、
「助けてくれえ」
と呶鳴りました。僕は恐ろしくて唯うなりました。
僕は誰れかに身をゆすぶられました。びっくらして眼を開いたら夢でした。
雨戸を半分開けかけたおかあさんが、僕のそばに来ていらっしゃいました。
「あなたどうかおしかえ、大変にうなされて……お寝ぼけさんね、もう学校に行く時間が来ますよ」
と仰有いました。そんなことはどうでもいい。僕はいきなり枕もとを見ました。そうしたら僕はやはり後生大事に庇のぴかぴか光る二円八十銭の帽子を右手で握っていました。