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Japanische Klassiker mit Furigana

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いっぽんのはな

一本の花

宮本 百合子

Lesen Sie 一本の花 (いっぽんのはな) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 26.709 Zeichen · 55 Bildschirme

Aozora Bunko

その小さい口は性格的で、朝子にいい感じを与えなかった。

相原は、先頃退職した或る男の噂をし、

「どうして罷めたのかね……いずれ何とかするように諸戸さんにも云おうと思っていたんだが」

と云った。朝子の知っている事実はそうではなかった。

「諸戸さんに、あなたが忠告なすったんじゃなかったんですか」

相原は平気で、

「ふーん、そんな風に聞えてますかね」

と云った。相原の態度と、言葉とだけで見ると、朝子の知っている事実の方が間違っていると云うようであった。

諸戸の処置を批評するようなことを云い、

「まあ、白杉さんも、一つ確りやって下さい。今にちょっと金も出せるようになるだろうから」

などと云った。朝子は黙って笑った。しんに弱気な小野心があるので、一人一人の顔を見ているうちは、悪感情を抱かせては損という打算が働く、相原はそういう種類の心を持っているらしかった。

帰り途、朝子は人間の生存の尖端というようなことを深く思った。道徳や常識、教養などその人を支える何の役にも立たない瞬間が人生にある。またそういう非常の時でないまでも、我等を取巻く常識や、道徳や、それ等の権威の失墜の間に生きて行くに、何が心のよりどころとなるであろう。