Japanische Klassiker mit Furigana
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ひとあしおさきに
一足お先に
夢野 久作
Lesen Sie 一足お先に (ひとあしおさきに) von 夢野 久作 (ゆめのきゅうさく) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 40.200 Zeichen · 79 Bildschirme
「痛くないですな……ここも……こちらも……」
と訊いていたが、青木が一つ一つにうなずくと、フンフンと気軽そうにうなずいた。
「大変によろしいようです。もう二三日模様を見てから退院されたらいいでしょう。何なら今日の午後あたりは、ソロソロと外を歩いてみられてもいいです」
「エッ。もういいんですか」
「ええ。そうして、痛むか痛まないか様子を御覧になって、イヨイヨ大丈夫ときまってから、退院されるといいですな。御遠方ですから……」
青木は乞食みたいにピョコピョコと頭ばかり下げたが、よっぽど嬉しかったと見える。
「お蔭様で……お蔭様で……」
そう云う青木を看護婦と一緒に、尻目にかけながら副院長は、私の方に向き直った。そうして一と通り繃帯の下を見まわると、看護婦がさし出した膿盤を押し退けながら、私の顔を見て、女のようにニッコリした。
「もうあまり痛くないでしょう」
私は無愛想にうなずきつつ、ピカピカ光る副院長の鼻眼鏡を見上げた。又も、何とはなしに憂鬱になりながら……。
「体温は何ぼかね」
と副院長は傍の看護婦に訊いた。
私は無言のまま、最前から挟んでおいた体温器を取り出して、副院長の前にさし出した。