Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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みっつのひふん

三つの悲憤

豊島 与志雄

Lesen Sie 三つの悲憤 (みっつのひふん) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 8.748 Zeichen · 18 Bildschirme

Aozora Bunko

「阮東……不埓者、阮東。」

怒りに震えた雷のような声でした。

「書生の分際で、お前は、周家の娘を何と心得ているのだ。そういう不埓者は、もう邸に置くことは出来ない。出て行け。即刻立ち退け。」

その言葉を阮東は胸の真中に受けて、仰向けにひっくり返りそうになりました。そこを持ちこたえようとしたはずみに、足がよろけて、池の中にざぶりと落ちこんでしまいました。

水は胸の下までの深さでしたが、横倒しに落ちこみましたので、彼は一度水に沈んで、それから慌て騒ぎ、夢中にあばれて、漸くはい上がり、そのまま、裏庭の方へ駆け出しました。

池の中には、李の花の一枝が、花弁を幾つか散らして、ゆらゆらと浮いていました。そのそばに、阮東の黒い沓が片方、ぽかりと浮いていました。

阮東は、裏庭から書生部屋の方へかけこみ、床の上に身を投げ出して、死んだように横たわっていました。もう眼も開かず、泣く力もありませんでした。

長い間たちました。誰も見舞ってくれる者もありませんでした。阮東は身体中つめたくなったのに気付いて、ぼんやり起き上りました。そしてそこに坐ったまま、また長い間じっとしていました。