Japanische Klassiker mit Furigana
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しゃんはい
上海
横光 利一
Lesen Sie 上海 (しゃんはい) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 145.628 Zeichen · 292 Bildschirme
彼は身体がことごとく重量を失ってしまって、透明になるのを感じた。骨のなくなった身体の中で前と後の風景がごちゃごちゃに入り交った。彼は橋の上に立ち停るとぼんやり泥溝の水面を見降ろした。その下のどろどろした水面では、海から押し上げて来る緩慢な潮のために、並んだ小舟の舟端が擦れ合ってはぎしぎし鳴りつつ揺れていた。その並んだ小舟の中には、もう誰も手をつけようともしない都会の排泄物が、いっぱいに詰りながら、星のうす青い光りの底で、波々と拡っては河と一緒に曲っていた。参木は此処を通るたびごとに、いつもこの河下の水面に突き刺さって、泥を銜えたまま錆びついていた起重機の群れを思い浮べた。その起重機の下では、夜になると、平和な日には劉髪の少女が茉莉の花を頭にさして、ランプのホヤを売っていた。密輸入の伝馬船が真黒な帆を上げながら、並んだ倉庫の間から脱け出て来ると、魔のようにあたりいっぱいを暗くしてじりじり静に上っていった。
参木はそれらの帆の密集した河口で、いつか傷ついた秋蘭を抱きかかえて、雨の中を病院まで走った夜のことを思い出した。あの秋蘭は今は何をしているだろう。