Japanische Klassiker mit Furigana
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しゃんはい
上海
横光 利一
Lesen Sie 上海 (しゃんはい) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 145.628 Zeichen · 292 Bildschirme
その舟の動かぬ舵や、道から露出した鉄管には、藁屑や沓下や、果実の皮がひっかかって溜っていた。ぶくぶく出る無数の泡は、泥のように塊りながら、その半面を朝日に光らせて狭い裏街の中を悠々と流れていった。お杉はそれらの泡を見ていると、欄干に投げかけている自分の身体が、人の売物になってぶらりと下っているように思われた。もしここから出て行けば、彼女はどこへ行って良いのか当がなかった。間もなく、あちこちの窓から泥溝へ向って塵埃が投げ込まれた。鶏の群は塵埃の舞い立つたびごとに、黄色い羽根を拡げてぱたぱたと裏塀の上を飛び廻った。湯が沸き出した頃になると、泥溝を挟んだ家々に、支那服の洗濯物がかかり始めた。物売りの籠に盛られたマンゴや白蘭花が、その洗濯物の下を見え隠れしながら曲っていった。
やがて、甲谷が起きてきた。彼はお杉に逢うとタオルを肩に投げかけていった。
「どうだ、眠られたか。」
次に参木が起きてくると、眠そうにお杉に笑いながらいった。
「どうした、昨夜は?」
しかし、お杉は誰にも黙って笑っていた。二人の背中が洗面所の方へ消えていくと、彼女は、そのどちらに自分が奪われているのかますます分らなくなって来るのであった。