Japanische Klassiker mit Furigana
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ふこう
不幸
Lesen Sie 不幸 (ふこう) von Kajii Motojirō (梶井 基次郎) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 4.060 Zeichen · 8 Bildschirme
彼女はその中にうろうろしながら、思案に暮れた。追われないままに鼠がその六畳の部屋の食膳の辺まで出て来た。
またしても風が烈しく唸りながら吹き過ぎて、屋根の上へ木の枯枝のようなものが落ちる音がした。
勝手元では鼠が味噌濾や鍋をがたがたさせる音に雑って、水道の水がぽたぽたと落ちる音がした。この寒さではその下が氷っているに違いないと彼女は思いながら、子供の身の上の寒さを案じた。
子供達は帽子もかぶらなければ、首巻きもせず、外套も着て出なかった。
病後の四郎がこの風に当って、折角ここまで癒って来た病気をぶりかえさなければいいが、もし道に迷ったのなら、年上の三郎がうまくここの番地が云えればいいが、とか彼女は様々な思いにかき暮れていた。
秘かな心の下で最後の「死」の怖れに触れては、それを打ち消していた。
また家の近くまで二人が帰って来るような気がして門まで出て行って、寒い空気の中に立ち尽したりした。
風の唸る中を、凍てついた路を渡る下駄の冴えかえった音が響いて来た。それははじめかすかではあったが鋭くとぎ澄された彼女の聴覚に触れた。彼女は屹っとなって身ずまいを正した。