Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ふしょうのあに

不肖の兄

豊島 与志雄

Lesen Sie 不肖の兄 (ふしょうのあに) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 18.889 Zeichen · 39 Bildschirme

Aozora Bunko

そして、うっかりすると照代と一緒に来る筈だったことを考えて、淋しい微笑が頬に上った。

羽の長い蚊が一匹、十一月の末というのにまだ生き残って、餉台のふちを力無く這いまわっていた。そいつがひょいと飛び上っておいて、僕の鼻の先にとまった。

僕は一寸苦笑したが、それから変に可笑しくなった。

敏子

こう話してくると、お前にも大体は分るだろう。僕はいくら自分の心にちゃんと聞いてみても、惨めだとか汚らわしいとか自責の念とか、そういったものを少しも感じなかったのだ。それも普通の道徳的な外面的の意味でじゃない。心の直接の裁きに於てなんだ。そのくせ、お前も知ってる通り、僕は本質的な道楽者でもない。

こいつあおかしい、俺の本体は何だ、とそう僕は独語したもんだ。そしてぼんやり考えた、何もかもみな相対的なんだ、事実そのものも、人の心も、感情も思想も、人事はみな相対的なんだ。絶対的なものなんか何もありゃあしない……とね。だから、拘泥しちゃいけない、即きすぎちゃあいけない……。

幼稚だね。だが分るかい。いやよく分るまい。僕自身にだってよくは分らないんだからね。

珍らしく早めに起き上って、縁側の日向にぼんやりしていると、松の影が薄すらと匐ってる庭に、大きな濃い影がぱっぱっと飛んだ。