Japanische Klassiker mit Furigana
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しがつばか
世相・競馬
織田 作之助
Lesen Sie 世相・競馬 (しがつばか) von 織田 作之助 (おださくのすけ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 19.112 Zeichen · 39 Bildschirme
げっそりと肉が落ち、眼ばかり熱っぽく光らせた蒼白いその顔を見て、私は佐伯の病気もいよいよいけなくなったのか、なるほどそんな噂が立つのも無理はあるまいという想いにいきなり胸をつかれたが、同時に佐伯の生活にはもはや耳かきですくうほどの希望も感動も残っていず、今は全く青春に背中を向け、おまけにその背中を悔恨と焦躁の火でちょろちょろ焼かれているのではないかと思われて、慰める言葉も私にはなかった。
ところが、その佐伯がすっかり変ってしまったのだ。亀のようにむっつりとしていた男が見ちがえるほど陽気になって、さかんにむだな冗談口を叩く。少しお饒舌を慎んだ方が軽薄に見えずに済むだろうと思われるくらいである。のべつ幕なしにしゃべっている。若い身空で最近は講演もするということだ。あれほどの病気もすっかり癒ってしまったとは思えないが、見たところピチピチして軽く弾んでいる。角がとれ、愛想の良くなったことは驚くばかりだ。血色のよい頬にその必要もなさそうな微笑を絶えず泛べている。以前は縦のものを横にすることすら億劫がっていた。枕元にあるものを手を伸ばして取ろうとしなかった。