Japanische Klassiker mit Furigana
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しがつばか
世相・競馬
織田 作之助
Lesen Sie 世相・競馬 (しがつばか) von 織田 作之助 (おださくのすけ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 19.112 Zeichen · 39 Bildschirme
なにか動物的な感覚になって汚いゴミ箱によりかかったりしている。当然街は彼を歓迎せず、豚も彼を見ては嘔吐を催したであろう。佐伯自身も街にいる自分がいやになる。そのくせ彼は舗道の両側の店の戸が閉まり、ゴミ箱が出され、バタ屋が懐中電燈を持って歩きまわる時刻までずるずると街にいて彷徨をつづけ、そしてぐったりと疲れて乗り込むのは、印で押したようにいつも終電車である。
佐伯が帰って来る頃には、改札口のほの暗い電燈をぽつんと一つ残して、あたりはすっかり明りを消してしまっている。駅員室のせまい暗がりのなかでふと黒く蠢いたのは、たぶん宿直の駅員が終電車の著いた音で眼をさましたのであろう。しかし起きて来る気配もない。すくない乗客はたいてい一つ手前の駅で降りてしまうので、その寂しい小駅に降り立つ人影は跫音もせぬくらいまばらである。たった一人の時さえ稀らしくなく、わざわざ改札に起きだして来るのも億劫なのであろう。したがって渡し損ねた切符が随分袂のなかに溜っている。それを佐伯は哀しいものに思い、そんな風に毎夜おそく帰って来る自分がまるで夜店出しの空の弁当箱に残っている梅干の食滓のように感じられて、情ないのだ。