Japanische Klassiker mit Furigana
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ちぶさ
乳房
宮本 百合子
Lesen Sie 乳房 (ちぶさ) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 27.932 Zeichen · 56 Bildschirme
畜生! という気もあって、ひろ子は六畳の小窓を急に荒っぽくあけて外を見おろした。
夜露に濡れたトタンが月に照らされている、平らに沈んだその光のひろがりが、ひろ子の目をとらえた。見えないところで既に高く高くのぼっている月の隈ない光は、夜霧にこめられたむこうの原ッぱの先まで水っぽく細かく燦めかせ、その煙るような軽い遠景をつい目の先に澱ませて、こわれた竹垣の端に歪んで立っている街燈が、その下に転ろがっている太い土管をボンヤリと照し出している。夜霧にとけまじった月光と、赤黄く濁った電燈の色とは、そこで陰気な影を錯雑させている。
貧しく棟の低い界隈の夜は寝しずまっている。ひろ子はそのまま雨戸をしめようとしたら、こっちの庇の下からいそいで男が姿を現した。足より先にまず顔をと云いたげに体を斜っかいに運んで二階の窓を振仰ぎながら、手をふった。細面の顔半面と着流しの肩に深夜の月は寒そうで、ひろ子は窓の奥から眼を見はったが、
「なアんだ!」
お前さんだったのかという声を出した。それを合図に待っていたらしく、寝床に起き上っていたタミノが手をのばして、電燈をひねった。俄の明りで、タミノは眠たい丸顔を一層くしゃくしゃさせた。