Japanische Klassiker mit Furigana
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ふたつのにわ
二つの庭
宮本 百合子
Lesen Sie 二つの庭 (ふたつのにわ) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 195.492 Zeichen · 389 Bildschirme
見まわしたところ、素子のいう虎の巻らしいものは見当らなかった。
「ないことよ、なんにも――」
「字引の下にあるだろう、カヴァーのかかったの」
重いロシア語字典の下に、四角っぽい形の厚い本がハトロン紙のカヴァーをかけてあった。
「これ?」
伸子は、手にとりあげた本を、むこうに坐っている素子の方にさしあげてみせた。
「そうさ」
立ったまま伸子は、その本をあけて見た。ブハーリン著、史的唯物論と印刷されている。これはしばしば新聞や雑誌の広告でみかけた題であった。同時に、伸子には意味のわからない題でもあった。伸子は、頁のところどころをあけてみながら、のろのろと、二人の坐っているところへ戻った。そして、ウメ子にその本をわたした。ウメ子は、落ちついて順序よく目次をよみ、いくらかの頁をめくった。ウメ子は、だまってそのハトロン紙でカヴァーをつけられた本を畳においた。その本の目次や、書かれている文章のところどころには、伸子がよみなれて来た本にない何か新鮮な、鋭いつっこんだ調子が感じられた。そこにある美しさが感じられた。伸子は手をのばしてウメ子のわきからまたその本をとりあげた。