Japanische Klassiker mit Furigana
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ふたつのてがみ
二つの手紙
Lesen Sie 二つの手紙 (ふたつのてがみ) von Akutagawa Ryūnosuke (芥川 竜之介) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 11.799 Zeichen · 24 Bildschirme
私は、仲入りに廊下へ出ると、すぐに妻を一人残して、小用を足しに参りました。申上げるまでもなく、その時分には、もう廻りの狭い廊下が、人で一ぱいになって居ります。私はその人の間を縫いながら、便所から帰って参りましたが、あの弧状になっている廊下が、玄関の前へ出る所で、予期した通り私の視線は、向うの廊下の壁によりかかるようにして立っている、妻の姿に落ちました。妻は、明い電燈の光がまぶしいように、つつましく伏眼になりながら、私の方へ横顔を向けて、静に立っているのでございます。が、それに別に不思議はございません。私が私の視覚の、同時にまた私の理性の主権を、ほとんど刹那に粉砕しようとする恐ろしい瞬間にぶつかったのは、私の視線が、偶然――と申すよりは、人間の知力を超越した、ある隠微な原因によって、その妻の傍に、こちらを後にして立っている、一人の男の姿に注がれた時でございました。
閣下、私は、その時その男に始めて私自身を認めたのでございます。
第二の私は、第一の私と同じ羽織を着て居りました。第一の私と同じ袴を穿いて居りました。そうしてまた、第一の私と、同じ姿勢を装って居りました。