Japanische Klassiker mit Furigana
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ふたりいるとき
二人いるとき
宮本 百合子
Lesen Sie 二人いるとき (ふたりいるとき) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 8.672 Zeichen · 18 Bildschirme
「私あるわ。もっと本当に私たちが大事なものを出してやる心持をうたった歌が欲しいわ。勇ましく戦ってくれ、そして、成ろうことなら生きて還ってくれ。どんなにこの心は強いでしょう。そして皆の願いがそうなのだと思うわ。そういう真個に情のあふれた落着いて勇ましい励ましの歌が欲しいわねえ」
好子は、型紙のつくりかたをやっているところで、ハトロン紙の隅で計算をしては物指で作図をしている。テーブルの上へ拡げた紙へ胸ごとのしかかる姿勢で好子はおだやかに云った
「山田は時々戦死するかもしれないよと云うのよ。そんなとき、私、それはそうねと云って、それでもやっぱり何か確りしたものを二人の間に感じて落着いていられるようになりたいと思うわ」
やがて小枝子が、寒いなかをいそいで歩いた薄赤い溌溂とした顔でやって来た。
「御免なさい、おくれて。出征の人で電車がこんでこんで……」
事務員らしいてきぱきさで、小枝子はすぐ仕事机の隅の風呂敷包みをひろげ、三尺の押入れを衣裳箪笥まがいにしたところに吊ってある縫いかけのスーツの上着を出した。小枝子が来るようになってもう一年以上経った。事務員では何年つとめていても技術がつかない。