Japanische Klassiker mit Furigana
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にじゅっせいききしゅ
二十世紀旗手
Lesen Sie 二十世紀旗手 (にじゅっせいききしゅ) von Dazai Osamu (太宰 治) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 14.083 Zeichen · 28 Bildschirme
二時間のち、同じところで二十枚のばいきんだらけのくしゃくしゃ汚き紙片、できるだけむぞうさに手交して、宅のサラリイ前借りしたのよ、と小さく笑った萱野さんの、にっくき嘘、そんな端々にまで、私の燃ゆる瞳の火を消そうと警戒の伏線、私はそれを悲しく思った。その夜、花の都、ネオンの森とやらの、その樹樹のまわりを、くぐり抜け、すり抜け、むなしくぐるぐる駈けずりまわった。使えないのだ。どうしても、そのお金を使えないのだ。奴婢の愛。女中部屋の縁のない赤ちゃけた畳、びんつけ油のにおい、竹の行李の底から恥かしき三徳出して、一枚、二枚とくしゃくしゃの紙幣、わが目前にならべられて与えられたような気がして、夜明けと共に、電話した。思いがけぬ大金ころがりこんで、お金お返しできますから、と事務的の口調で言って、場所は、帝国ホテル、と附け加えた。華麗豪壮の、せめて、おわかれの場を創りあげたかった。
その日、快晴、談笑の数刻の後、私はお金をとり出し、昨夜の二十枚よりは、新しい、別な二十枚であることを言外に匂わせながら、しかも昨夜この女から受けとったままに、うちの三枚の片隅に赤インキのシミあったことに、はっと気づいて、もうおそい、萱野さん気づかぬように、気づかぬように、人知れぬ深い祈り、ミレエの晩鐘におとらず深き、人生の幕の陰の祈り。