Japanische Klassiker mit Furigana
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にはいじん
二癈人
江戸川 乱歩
Lesen Sie 二癈人 (にはいじん) von 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 11.388 Zeichen · 23 Bildschirme
斎藤氏はこう云って永い実戦談の結末をつけた。
井原氏は、話の余韻でも味う様に暫く黙っていた。
「この男は戦争のお蔭で一生台無しにして了った。お互に癈人なんだ。がこの男はまだしも名誉という気安めがある。併し俺には……」
井原は又しても心の古傷に触れてヒヤリとした。そして肉体の古傷に悩んでいる斎藤氏などはまだまだ仕合せだと思った。
「今度は一つ私の懺悔話を聞いて戴きましょうか。勇ましい戦争の御話の後で、少し陰気過ぎるかも知れませんが」
お茶を入換えて一服すると、井原氏は如何にも意気込んだ様にこんな事を云った。
「是非伺い度いもんですね」
斎藤氏は即座に答えた。そして何事かを待構える様にチラと井原氏の方を見たが、直ぐ、さりげなく眼を伏せた。
井原氏はその瞬間、オヤと思った。井原氏は今チラと彼の方を見た斎藤氏の表情に、どこか見覚えがある様な気がしたのだった。彼は斎藤氏と初対面の時から――といっても十日計り以前のことだが――何かしら、二人の間に前世の約束とでも云った風の引懸りがある様な気がしていた。そして、日が経るにつれて、段々その感じが深くなって行った。でなければ、宿も違い、身分も違う二人が、僅か数日の間にこんなに親しくなる筈がないと井原氏は思った。