Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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にじゅうしんぞう

二重心臓

夢野 久作

Lesen Sie 二重心臓 (にじゅうしんぞう) von 夢野 久作 (ゆめのきゅうさく) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 65.188 Zeichen · 129 Bildschirme

Aozora Bunko

と輝き込んで来る。盛んに啼いている蝉の声も、分厚い豪奢な窓硝子に遮られて遠く、微かにしか聞こえず、壁が厚いせいであろう、暑さもさほどに感じられない。近代科学の尖端が作る妖異な気分が部屋の中一パイにシンカンとみちみちしている感じである。

「この家の中は随分涼しいんですね」

「どこかに冷房装置がしてあるらしいね……ところで見たまい。被害者はこの事務机の前の大きな廻転椅子に腰をかけていたんだ。コレ。この通り、椅子の背中に少しばかり血が附いとるじゃろう。被害者轟九蔵氏が、昨夜遅く机にかかって仕事をしている最中に、犯人が背後から抱き付いて、心臓をグッと一突き殺ったらしいんだ」

「仲々手練な事をやったもんですなあ」

「ピストルを使わぬところを見ると犯人も何か後暗い疵を持っていたかも知れんテヤ」

「さあ。どんなものでしょうか」

「とにかく尋常の奴じゃないよ。急所を知っとるんじゃから」

「兇器は……」

「兇器は今、署へ押収してあるが、新聞にも掲ている通りこの机の上に在った鋭い、薄ッペラな両刃のナイフだよ。僕もその死骸に刺さっとる実況を見たがね。左の乳の下から背中へ抜け通ったままになっていた。