Japanische Klassiker mit Furigana
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きょうかのこむすめどうじょうじ
京鹿子娘道成寺
酒井 嘉七
Lesen Sie 京鹿子娘道成寺 (きょうかのこむすめどうじょうじ) von 酒井 嘉七 (さかいかしち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 24.841 Zeichen · 49 Bildschirme
この日も、自分の手で取り出し、糸の工合を調べた上で、撥を手に取りあげたのでございました。その瞬間に、癪が起ったのでございました。私は、撥と三味線をそこに、なげすてるように置きまして、
「新三郎、来ておくれ」
と、苦しい息の中から、となりの部屋におります私の一の弟子に、呼びかけたのでございます。――私の部屋には誰もいなかったのでございます。新三郎は、私の声に、すぐと、馳けつけてくれまして、
「師匠、それでは、医師を呼びますから、しばらく、ご辛抱下さい」
と、かけて出たのでございます。それから、後のことは、口にもつくせぬ痛みのために、何も記憶いたしてはおりません。いたみが去りました時には、もうすでに、娘道成寺の幕は上っておりまして、新三郎が、私の替りに、立三味線を弾いていたのでございます。私は、こう聞きますと、医師のとめるのも、振りきりまして、楽屋を出、舞台の横に佇んで、じっと、新三郎の三味線を見まもっていたのでございます――もちろんのこと、どうか、無事につとめてくれます様にと、祈っていたのでございます。私の、こうした行動に、疑いがかかっているようで御座います。