Japanische Klassiker mit Furigana
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あだうちさんたい
仇討三態
菊池 寛
Lesen Sie 仇討三態 (あだうちさんたい) von 菊池 寛 (きくちかん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 16.136 Zeichen · 33 Bildschirme
藩では、さすがにこの不幸な兄弟を見捨てなかった。兄忠次郎に旧知半石を与えて、馬回りに取り立ててくれた。
が、忠次郎は怏々として楽しまなかった。その上、兄弟についての世評が、折々二人の耳に入った。それは、決して良い噂ではなかった。二人は、敵を見出しながら、躊躇して、得討たないでいる間に、敵に死なれたというのは、まだよい方の噂だった。悪い方の噂は、兄弟をかなり傷つけていた。和田淳庵という医師が病死したからといって、それが直之進であるとは決っていない。ことに父が討たれたときに、弱冠であった忠三郎が敵の面体を確かに覚えていようはずがない。その忠三郎が、一目見たからといって淳庵が直之進であると決めてしまうのは、不穿鑿であると。これは、兄弟にはかなり手痛い非難であった。が、もっとひどい噂があった。兄弟は、敵討に飽いたのだ。わずか八年ばかりの辛苦で復讐の志を捨ててしまったのだ。和田淳庵という名もない医師が死んだのを、直之進が病死したのだといいこしらえて、帰参のいい訳にしたのだと。兄はそんな流言を聞くごとに、血相を変えていきり立った。彼はそうした噂をいいふらすものと、刺し違えて死のうと思っていた。