Japanische Klassiker mit Furigana
ja-reading.com
Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.
あだうちきんしれい
仇討禁止令
菊池 寛
Lesen Sie 仇討禁止令 (あだうちきんしれい) von 菊池 寛 (きくちかん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 17.238 Zeichen · 35 Bildschirme
何故、お八重が泣くか、その理由があまりにはっきり分かっているので、新一郎も、急に心が乱れ、堪えがたい悩ましさに襲われた。
いっそ、すべてを忘れて、そのかぼそい身体を抱き寄せてやった方が、彼女も自分も幸福になるのではないかと思ったが、しかし新一郎の鋭い良心が、それを許さなかった。私利私欲のために殺したのではないが、親の敵には違いない。しかも、それを秘して、その娘と契りを結ぶことなどは、男子のなすべきことでないという気持が、彼の愛欲をぐっと抑えつけてしまうのである。
彼は、しばらくはお八重の泣くのにまかせていたが、やがて静かに言葉をかけた。
「お八重殿、そなたの気持は、拙者にもよく分かっている。長い間、拙者を待っていて下さるお心は、身にしみて嬉しい。今も、そなたを妻同然に思っている。しかし、夫婦の契りだけは、心願のことあって、今しばらくはできぬ。そなたも心苦しいだろう、拙者も心苦しい。が、あきらめていてもらいたい。そのうちには、妻と呼び夫と呼ばれる時も、来るでござろう」
新一郎の言葉には、真実と愛情とが籠っていた。
お八重は、わあっと泣き伏してしまった。