Japanische Klassiker mit Furigana
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いまどしんじゅう
今戸心中
広津 柳浪
Lesen Sie 今戸心中 (いまどしんじゅう) von 広津 柳浪 (ひろつりゅうろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 36.688 Zeichen · 74 Bildschirme
二
酒だ、酒だ」と、次の間へかけて呼ぶ。
「もうすこし。お前さんも性急だことね。ついぞない。お梅どんが気が利かないんだもの、加炭どいてくれりゃあいいのに」と、小万が煽ぐ懐紙の音がして、低声の話声も聞えるのは、まだお熊が次の間にいると見える。
吉里は紙巻煙草に火を点けて西宮へ与え、「まだ何か言ッてるよ。ああ、いやだいやだ」
「またいやだいやだを始めたぜ。あの人も相変らずよく来てるじゃアないか。あんまりわれわれに負けない方だ。迷わせておいて、今さら厭だとも言えまい。うまい言の一語も言ッて、ちッたあ可愛がッてやるのも功徳になるぜ」
「止しておくんなさいよ。一人者になッたと思ッて、あんまり酷待ないで下さいよ」
「一人者だと」と、西宮はわざとらしく言う。
「だッて、一人者じゃアありませんか」と、吉里は西宮を見て淋しく笑い、きッと平田を見つめた。見つめているうちに眼は一杯の涙となッた。
二
平田は先刻から一言も言わないでいる。酒のない猪口が幾たび飲まれるものでもなく、食いたくもない下物をッたり、煮えつく楽鍋に杯泉の水を加したり、三つ葉を挾んで見たり、いろいろに自分を持ち扱いながら、吉里がこちらを見ておらぬ隙を覘ッては、眼を放し得なかッたのである。