Japanische Klassiker mit Furigana
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いせのまき
伊勢之巻
泉 鏡花
Lesen Sie 伊勢之巻 (いせのまき) von 泉 鏡花 (いずみきょうか) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 17.617 Zeichen · 35 Bildschirme
その時打向うた卓子の上へ、女の童は、密と件の将棋盤を据えて、そのまま、陽炎の縺るるよりも、身軽に前後して樹の蔭にかくれたが、枝折戸を開いた侍女は、二人とも立花の背後に、しとやかに手を膝に垂れて差控えた。
立花は言葉をかけようと思ったけれども、我を敬うことかくのごときは、打ちつけにものをいうべき次第であるまい。
そこで、卓子に肱をつくと、青く鮮麗に燦然として、異彩を放つ手釦の宝石を便に、ともかくも駒を並べて見た。
王将、金銀、桂、香、飛車、角、九ツの歩、数はかかる境にも異はなかった。
やがて、自分のを並べ果てて、対手の陣も敷き終る折から、異香ほのぼのとして天上の梅一輪、遠くここに薫るかと、遥に樹の間を洩れ来る気勢。
円形の池を大廻りに、翠の水面に小波立って、二房三房、ゆらゆらと藤の浪、倒に汀に映ると見たのが、次第に近くと三人の婦人であった。
やがて四阿の向うに来ると、二人さっと両方に分れて、同一さまに深く、お太鼓の帯の腰を扱帯も広く屈むる中を、静に衝と抜けて、早や、しとやかに前なる椅子に衣摺のしっとりする音。
と見ると、藤紫に白茶の帯して、白綾の衣紋を襲ねた、黒髪の艶かなるに、鼈甲の中指ばかり、ずぶりと通した気高き簾中。