Japanische Klassiker mit Furigana
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イタリアのことう
伊太利亜の古陶
宮本 百合子
Lesen Sie 伊太利亜の古陶 (イタリアのことう) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 15.477 Zeichen · 31 Bildschirme
けれども、その朗らかさには一面執念づよい愛好家の神経質が附随していた。彼は、自分の鑑識でよいと認め得ないものに対しては納得の行く迄帽子をとらない頑固さを持っていた。彼はN会社の事務室ででも、電車の中ででも、頭についた陶器のことは忘れなかった。絶えず心でその色や形を反芻した。そして或る期間経つと、何かのはずみで忽然彼自身の信念がその作品に対して明確に形造られるのであった。
彼は、時々恐ろしく凹凸な市街の道路で揺り上げ揺り下げられながら、衣嚢から先刻の備忘録をとり出した。そして、スケッチのマジョリカを見なおし、彼の謂う捏ねかたを始めた。
みや子は、黒絹の襟巻にくるまり、黙って暫く良人の手元を見ていたが軈て、
「あなた」
と呼びかけた。日下部は手帳に眼をとめたまま答えた。
「うむ?」
「高畠さんのところで沼津の地所を開放なさるっていう話ね、御存じだったのですか?」
「ああ。山村がいつかそんな意志が子爵にあるらしいことを云っていた」
「――御相談役で責任がおありになるんではありませんか?」
みや子は、子爵の応接間や書斎で喋った時よりはずっと強い、たっぷりした音声でものを云った。