Japanische Klassiker mit Furigana
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イタリアのことう
伊太利亜の古陶
宮本 百合子
Lesen Sie 伊太利亜の古陶 (イタリアのことう) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 15.477 Zeichen · 31 Bildschirme
日下部はその親心を身につまされて感じた。同時に、自分が二度も折り返して観せて貰ったのは、ただ自分の研究心の満足のためばかりであったことや、いずれ、これが真物ではなかったことが子爵の耳にも入るに違いない時のこと等を考えると、彼は寧ろ痛み入った気持になった。彼は丁寧な、真心の籠った礼手紙を書いた。彼は自分で玄関まで出、待っている使にそれを渡した。
十分ばかり後、客を送り出して居間に来て見ると、みや子は箱を出したまま、奉書や水引の始末をしていた。
彼女は良人を見ると不平そうに云った。
「箱書も何もありませんね」
彼は胡座をくんで、箱の蓋をとった。
「西洋のものだから箱書はないさ」
「いいものなんですか?」
「さあね」
日下部は陶器に関してだけは妻に出鱈目を云えなかった。勝気なみや子は大抵のことは自分の頭で真偽を判断することを主張し、且実行していたが、陶器は例外であった。彼女が素直に自分の意見を棄てるのはこの一事ばかりとも云えた。従って、日下部は嘘を教えると、自分が何時何処でどんな冷汗を掻くまいものでもない危険が伴うのであった。
彼は、淡白らしく云った。
「極上というものではあるまいね」