Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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のびじたく

伸び支度

島崎 藤村

Lesen Sie 伸び支度 (のびじたく) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 6.120 Zeichen · 13 Bildschirme

Aozora Bunko

一人の兄さんの方は袖子の寝ているのを見ると黙っていなかった。

「オイ、どうしたんだい。」

その権幕に恐れて、袖子は泣き出したいばかりになった。そこへお初が飛んで来て、いろいろ言い訳をしたが、何も知らない兄さんは訳の分からないという顔付きで、しきりに袖子を責めた。

「頭が痛いぐらいで学校を休むなんて、そんな奴があるかい。弱虫め。」

「まあ、そんなひどいことを言って、」とお初は兄さんをなだめるようにした。「袖子さんは私が休ませたんですよ――きょうは私が休ませたんですよ。」

不思議な沈黙が続いた。父さんでさえそれを説き明かすことが出来なかった。ただただ父さんは黙って、袖子の寝ている部屋の外の廊下を往ったり来たりした。あだかも袖子の子供の日が最早終わりを告げたかのように――いつまでもそう父さんの人形娘ではいないような、ある待ち受けた日が、とうとう父さんの眼の前へやって来たかのように。

「お初、袖ちゃんのことはお前によく頼んだぜ。」

父さんはそれだけのことを言いにくそうに言って、また自分の部屋の方へ戻って行った。こんな悩ましい、言うに言われぬ一日を袖子は床の上に送った。