Japanische Klassiker mit Furigana
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いど
作家の自伝102 伊藤左千夫
伊藤 左千夫
Lesen Sie 作家の自伝102 伊藤左千夫 (いど) von 伊藤 左千夫 (いとうさちお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 9.100 Zeichen · 19 Bildschirme
諸君も語れ予先ず語らんなど云える前言に対しても何分此の儘止められぬ、ままよ書過しは書過しとして兎に角今少し後を続けて見ようと決心した。遠き慮りなき時は、近き憂ありとは、能くも云うたものじゃと我から自分を嘲ったのである。
予の家庭は寧ろ平和の坦道を通過して来たのであるが、予は自らの家庭を毫も幸福なりしとは信じない、悲惨と云う程の事もなかった代り、尋常以上の快楽もなかった。云わば極めて平凡下劣の家庭に安じたのである、或一種の考から其の下劣平凡の家庭を却て得意とした時代もあった。
予は十八歳の春、豊かならぬ父母に僅少の学資を哀求し、始めて東京に来って法律学などを修めた。政界の人たらんとの希望からである。予が今に理窟を云うの癖があるは此の時代の遺習かと、独りで窃におかしく思っとる。学問の上に最も不幸なりし予は、遂に六箇月を出でざるに早く廃学せねばならぬ境遇に陥った。何時の間にか、眼が悪くなって府下の有名な眼科医三四人に診察を乞うて見ると、云うことが皆同じである、曰く進行近視眼、曰く眼底充血、最後に当時最も雷名ありし、井上達也氏に見て貰うと、卒直なる同氏はいう、君の眼は瀬戸物にひびが入った様なものじゃ。