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Japanische Klassiker mit Furigana

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やすきちのてちょうから

保吉の手帳から

芥川 竜之介

Lesen Sie 保吉の手帳から (やすきちのてちょうから) von Akutagawa Ryūnosuke (芥川 竜之介) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 8.771 Zeichen · 18 Bildschirme

Aozora Bunko

武官はパンを頬張ったなり、苦しそうに笑っていた。

大浦は保吉も知っていた。守衛は何人か交替に門側の詰め所に控えている。そうして武官と文官とを問わず、教官の出入を見る度に、挙手の礼をすることになっている。保吉は敬礼されるのも敬礼に答えるのも好まなかったから、敬礼する暇を与えぬように、詰め所を通る時は特に足を早めることにした。が、この大浦と云う守衛だけは容易に目つぶしを食わされない。第一詰め所に坐ったまま、門の内外五六間の距離へ絶えず目を注いでいる。だから保吉の影が見えると、まだその前へ来ない内に、ちゃんともう敬礼の姿勢をしている。こうなれば宿命と思うほかはない。保吉はとうとう観念した。いや、観念したばかりではない。この頃は大浦を見つけるが早いか、響尾蛇に狙われた兎のように、こちらから帽さえとっていたのである。

それが今聞けば盗人のために、海へ投げこまれたと云うのである。保吉はちょいと同情しながら、やはり笑わずにはいられなかった。

すると五六日たってから、保吉は停車場の待合室に偶然大浦を発見した。大浦は彼の顔を見ると、そう云う場所にも関らず、ぴたりと姿勢を正した上、不相変厳格に挙手の礼をした。