Japanische Klassiker mit Furigana
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ちゅうとう
偸盗
Lesen Sie 偸盗 (ちゅうとう) von Akutagawa Ryūnosuke (芥川 竜之介) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 48.934 Zeichen · 97 Bildschirme
、おぼつかなく光らせながら、ほのかな明るみと影との中に、あらゆる物象を、ぼんやりとつつんでいる。町をめぐる山々も、日中のほとぼりを返しているのであろう、おのずから頂きをおぼろげな月明かりにぼかしながら、どの峰も、じっと物を思ってでもいるように、うすい靄の上から、静かに荒廃した町を見おろしている――と、その中で、かすかに凌霄花のにおいがした。門の左右を埋める藪のところどころから、簇々とつるをのばしたその花が、今では古びた門の柱にまといついて、ずり落ちそうになった瓦の上や、蜘蛛の巣をかけた楹の間へ、はい上がったのがあるからであろう。……
窓によりかかった阿濃は、鼻の穴を大きくして、思い入れ凌霄花のにおいを吸いながら、なつかしい次郎の事を、そうして、早く日の目を見ようとして、動いている胎児の事を、それからそれへと、とめどなく思いつづけた。――彼女は双親を覚えていない。生まれた所の様子さえ、もう全く忘れている。なんでも幼い時に一度、この羅生門のような、大きな丹塗りの門の下を、たれかに抱くか、負われかして、通ったという記憶がある。が、これももちろん、どのくらいほんとうだか、確かな事はわからない。