Japanische Klassiker mit Furigana
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きずあとのはいけい
傷痕の背景
豊島 与志雄
Lesen Sie 傷痕の背景 (きずあとのはいけい) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 19.022 Zeichen · 38 Bildschirme
その中に、有吉祐太郎が、愉快そうに髭をひねっていた。軍服で、勲五等の旭日章を一つ、胸につけていた。赤い太陽と白銀の光線とが、笑うたびに、光の反映を受けて、茶褐色の服地の上に浮出した……。
時間が過ぎて、夜空に、星の光がました。露の結ぼれかけてる気配の、植込から向うは、しんと静まり返って……。
やがて、座敷の方の人数が、少しずつ減っていった。田代芳輔は席を立って、袴なしの細そりした身体を、庭の方へ、一巡、静に運んでまわった――居間に引込む前に。
有吉等の一群の横に、高張の柱の影を受けた暗がりに、杉本浩は、卓子に肱をついて、ウイスキーの瓶を引寄せて、無言で、夢想に耽っていた。異邦人といった気持の、孤独感の中で、その夢想は幻覚的な形を取っていった――
――田代さんは、夫人を相手に、夕食の膳に向っている。膳――黒塗りの大きな餉台、その横手に、彼杉本も、同じ料理を前に、膝を正している。夫人の手で、二人の杯へ、九谷の銚子から、燗のぬるめの白鶴が、代る交る注がれる。その杯と、生物の多い新鮮な料理の箸との、合間合間に、田代さんは、杉本へ言葉をかける。最近の動静……未来の抱負……日常生活……それも、何をしてるか……何をするつもりか……どんな風か……といった調子の軽い問い。