Japanische Klassiker mit Furigana
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そう
僧
小川 未明
Lesen Sie 僧 (そう) von 小川 未明 (おがわみめい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 10.206 Zeichen · 21 Bildschirme
雲が切れて、青い空が僅かに森を透して見えることがあった。夕暮になると何処からともなく鳥がこの森に集って来て啼いた。その啼声を聞いたばかり。娘は自分の家に使っている黄銅の湯沸や、青い錆の出た昔の鏡や、その他、総て古くから伝わっていた器物以外に眼を娯ましたような、鮮かな緑、活々とした紅、冴え冴えしい青、その他美しい色のついた品物を持って見なかった。
金があるというばかりで、家の内は陰気であった。古からあった一挺の三味線は、娘の子供の時分までは、よく母親の弾いた音を聞いたが、或年の梅雨の頃、その三味線の胴皮が、ぼこぼこに弛んで音が出なくなってから何処へか隠されてしまった。勿論、張り換るような処がこの近傍になかったからでもあろう。それからというものは、家の内は常に寂然としていて笑い声すら洩れなかった。最もその三味線を弾く時、母親の歌った声は、まだ娘の耳に残っている。その歌は、その頃、よく分らなかったから覚えている筈がない。ただ歌の調子が、いかにも哀れっぽい、怨めしい、陰気な、形容が出来ないが、調子は忘れ難い印象をとどめている。何んでも母が、まだ若くて頭髪も黒く、艶かで、白い顔を少し横に向けて、三味線を抱えて庭の方を見ながら歌った。