Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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やつがたけのまじん

八ヶ嶽の魔神

国枝 史郎

Lesen Sie 八ヶ嶽の魔神 (やつがたけのまじん) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 160.664 Zeichen · 323 Bildschirme

Aozora Bunko

「ちゃあんと浄瑠璃にも書いてある奴さ」

「二十四孝のご殿かね」

「……こんな殿ごと添い臥しの身は姫御前の果報ぞとツンツンテンと、つまりここだ」

「冗談じゃねえ、助からねえな。口三味線とは念入りだ」

「それからお前奥庭になってよ、白狐めが業をするわさ。明神様の使姫は白狐ということになっているんだからね」

一六

「だんだんご座船が近寄って来る。だんだんご座船が近寄って来る」こう云って一人が指差した。

「船首に立たれたのが若殿らしい」

「皆紅の扇をば、手に翳してぞ立ち給うかね」

「ほんとに扇を持っておられる」

「オーイオーイと差し招けば……」

「どっちだどっちだ、熊谷かえ? それとも厳島の清盛かえ」

「どうも不真面目でいけないね。静かに静かに」と一人が云った。

で、人達は口を噤み、湖上を颯々と進んで来る若殿のご座船を見守った。

今、ご座船は停止した。

諏訪因幡守忠頼の嫡子、頼正君は二十一歳、冒険敢為の気象を持った前途有望の公達であったが、皆紅の扇を持ち、今船首に突っ立っている。

そのご座船を囲繞して二十隻の小船が漂っていたが、この日天晴れ気澄み渡り、鏡のような湖面にはただ一点の曇りさえなく、人を恐れず低く飛ぶ小鳥の、矢のように早い影をさえ、鮮かに映して静まり返り、昇って間もない朝の陽が、赤味を加えた黄金色に水に映じ