Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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やつがたけのまじん

八ヶ嶽の魔神

国枝 史郎

Lesen Sie 八ヶ嶽の魔神 (やつがたけのまじん) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 160.664 Zeichen · 323 Bildschirme

Aozora Bunko

て輝く様など、絵よりも美しい景色である。

東の空には八ヶ嶽が連々として聳え連なり、北には岡谷の小部落が白壁の影を水に落とし、さらに南を振り返って見れば、高島城の石垣が灰色なして水際に峙ち、諏訪明神の森の姿や、水狐族と呼ばれる巫女の一団が、他人を雑えず住んでいる神宮寺村の丘や林などあるいは遠くあるいは近く、山に添ったり水に傾いたり、朝霧の中に隠見して、南から西へ延びている。

しかし頼正は景色などには見とれようとはしなかった。じっと水面を見詰めている、いやそれは水面ではなく、水を透して水の底を、見究めようとしているのであったが、幾十丈とも知れないほど深く湛えた蒼黒い水は、頼正の眼を遮って水底を奥の方へ隠している。

と、頼正は眼を上げて、二十隻の供船を見廻したが、扇を高く頭上へ上げると、横へ一つ颯と振った。

すると、ご座船に一番近い一隻の船の船首から、裸体の男が身を躍らせ湖水の中へ飛び込んだ。パッと立つ水煙り! キラキラと虹が射したのは日がまだ高く昇らないからであろう。

若殿頼正を初めとし、船中の武士は云うまでもなく、岸に群がっている町人百姓まで、固唾を呑んで熱心に水の面を眺めている。