Japanische Klassiker mit Furigana
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やつがたけのまじん
八ヶ嶽の魔神
国枝 史郎
Lesen Sie 八ヶ嶽の魔神 (やつがたけのまじん) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 160.664 Zeichen · 323 Bildschirme
「すなわち若殿頼正公」
「あッ、なるほど!」と思わず云って門番はキョトンと眼を丸くした。
「何んとでござるな。一言もござるまい」
葉之助は笑ったものである。
「いや一言もござりませぬ」
「しからば開門なさるよう」
「やむを得ぬ儀、いざお通り」
ギーと門番は門を開けた。ポンと潜った葉之助は、昼間あらかじめ調べて置いた、野良の細道をサッサッと神宮寺村の方へ歩いて行く。遅い月が出たばかりで野面は蒼茫と光っている。微風に鬢の毛を吹かせながら急かず焦心らず歩いて行くものの心の中ではどうしたものかと、策略を巡らしているのであった。
間もなく遥かの行手に当たって水狐族の部落が見渡された。家数にして百軒余り、人数にして三百人もあろうか、今はもちろん寝静まっていて人影一つ見えようともしない。夜眼にハッキリとは解らないが、家の造り方も尋常と異い、きわめて原始的のものらしく、ひときわ眼立つ一軒の大厦は、部落の長の邸であろう。あたかも古城のそれのように、千木や勝男木が立ててある。そうして屋根は妻入式であり、邸の四方に廻縁のある様子は、神明造りを想わせる。
と、忽然その辺から音楽の音が聞こえて来た。