Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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やつがたけのまじん

八ヶ嶽の魔神

国枝 史郎

Lesen Sie 八ヶ嶽の魔神 (やつがたけのまじん) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 160.664 Zeichen · 323 Bildschirme

Aozora Bunko

「お前の父母は何んと云うな?」

「父は南条右近と申し、信州飯田堀石見守の剣道指南役にござります。母は同藩の重役にて前川頼母の第三女お品と申すものにございます」

「さようさようそうであったな。それは私も知っておる。しかしそれは仮り親じゃ」

「ナニ、仮り親でございますと? 奇怪な仰せ、その仔細は?」葉之助は気色ばむ。

「いやいやそれは明かされぬ。しかしそのうち自然自然明瞭になる時節があろう。その時節を待たねばならぬ」

「先刻より様々の仰せ、不思議なことばかりでございますが、そもそもあなたにはいかなるご身分、いかなるお方でございましょう?」

「私はお前の産まれない前に、この山中にいた者じゃ」

「ははあ、さようでございますか」

「そうしてお前の実の親とは深い関係のあるものじゃ。殊に死なれた母親とはな」

「……?」

「善、平等、慈悲、平和、私はこれらの鼓吹者じゃ」

「ははあさようでございますか」

「お前の産まれる少し前に私はこの山を立ち去った。徳の不足を感じたからじゃ。しかし私にはこの山の事がいつも心にかかっていた。で私は四六時中お前の傍に付いていた。いやいや敢てお前ばかりではなくあらゆる不幸な人間にはいつも私は付いているのだ。