Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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やつがたけのまじん

八ヶ嶽の魔神

国枝 史郎

Lesen Sie 八ヶ嶽の魔神 (やつがたけのまじん) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 160.664 Zeichen · 323 Bildschirme

Aozora Bunko

こう思って紋兵衛はお露を連れてこの大江戸へは来たのであった。

それにもう一つ紋兵衛は、五千石の旗本で、駿河守には実の舎弟、森家へ養子に行ったところから、森帯刀と呼ばれるお方から、密々に使者を戴いていたので、上京しなければならないのであった。

この二人の上京は、実のところ葉之助にとっては、痛し痒しというところであった。彼は依然としてお露に対しては強い恋を感じていた。出逢って話すのは、もちろん非常に楽しかった。しかし同時に苦痛であった。呪詛の言葉をどうしよう? 「畜生道! 畜生道!」「お殺しよその男を!」こう二の腕の人面疽が、嘲笑い囁くのをどうしよう?

それは非番の日であったが、葉之助は市中を歩き廻り、夜となってはじめて帰路についた。

愛宕下三丁目、当時世間に持て囃されていた、蘭医大槻玄卿の屋敷の裏門口まで来た時であったが、駕籠が一挺下ろしてあった。と裏門がギーと開いて、中老人が現われた。見れば大鳥井紋兵衛であった。

「これは不思議」と思いながら、葉之助は素早く木蔭に隠れじっと様子を窺った。

それとも知らず紋兵衛は、手に小長い箱を持ち、フと駕籠の中へはいって行った。