Japanische Klassiker mit Furigana
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やつがたけのまじん
八ヶ嶽の魔神
国枝 史郎
Lesen Sie 八ヶ嶽の魔神 (やつがたけのまじん) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 160.664 Zeichen · 323 Bildschirme
プーッと匂って来る快い匂い、まず葉之助の心をさらった。
はてなと思いながらはいったとたん、思わずあっと声を上げた。
黒い高塀に囲まれているので、往来からは見えなかったが、庭一面に草花が爛漫と咲き乱れているのであった。
「これは綺麗な花園でござるな」感嘆して立ち止まった。
するとその時園丁と見えて、鋤を担いだ大男が花を分けて現われたが、二人の姿をチラリと見ると逃げるように隠れ去った。
「咽せ返るようなよい匂いだ」葉之助は幾度も深呼吸をしたが、「これは何んという花でござるな?」
「大茴香でございます」
「おおこれが茴香か。ふうむ、実に見事なものだ。茴香といえば高価な薬草、さすが大槻玄卿殿は、当代名誉の大医だけあって、立派な薬草園を持っておられる」
さすがの葉之助も感心して、園に添って歩いて行った。すると一箇所一間四方ぐらい、その茴香の花園が枯れ凋んでいる箇所へ来た。
「これはどうも勿体ない。茴香が枯れておりますな」葉之助は立ち止まった。
「はい主人も心配して、恢復策を講じますものの、一旦枯れかかった茴香は、容易なことでは生き返らず、こまっておるのでございます」女はこう云いながら耳を澄ました。