Japanische Klassiker mit Furigana
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やつがたけのまじん
八ヶ嶽の魔神
国枝 史郎
Lesen Sie 八ヶ嶽の魔神 (やつがたけのまじん) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 160.664 Zeichen · 323 Bildschirme
その手を山吹はちょっと引いたがそれは無心でしたことであった。そんな事より今や彼女は自分が江戸へ出て行って立身出世をした時の事を空想に浮かべているのであった。
で、多四郎は懲りずにまた山吹の手をとったがやはり彼女はそのままでいた。
と、山吹は囈語のようにまたもこんなことを叫んだのであった。
「ああ妾厭だ! 山の中は!」
「では参ろうじゃありませんか。花の大江戸の真ん中へね」
多四郎は山吹の手を引いた。彼女は彼に引かるるままに彼の胸の上に顔を埋ずめた。
「連れて行ってください! 連れて行ってください! 妾どうしたって江戸へ行きます!」
九
凄じい微笑が一刹那多四郎の頬に浮かんだが、山吹の顔をジリジリと上の方へ向けようとする。二人の顔が合った時多四郎は突然自分の顔を山吹の顔へ落としかけた。
とたんに笑い声が聞こえて来た。ハッとして二人が顔を上げると牛丸が門口に立っている。
「ヤーイ、何をベチャクチャしてるのだい! 岩さんに云い付けるぞ!」憎悪の光を眼に湛え、「オイ岩さんがやって来るぞ! 妙な人と一緒にな!」
「馬鹿! 悪戯っ児! 厭な餓鬼!」
そこは部落の女である。