Japanische Klassiker mit Furigana
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やつがたけのまじん
八ヶ嶽の魔神
国枝 史郎
Lesen Sie 八ヶ嶽の魔神 (やつがたけのまじん) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 160.664 Zeichen · 323 Bildschirme
久田姫は遮った。「信じられないのでございますわ。何故と申しますにそうおっしゃる時いつもお姉様のお眼の中に涙が溜まるではございませぬか。偽りの証拠でございますわ」
こう云うと久田姫は眼を抑えた。指と指との隙を洩れて涙が一筋流れ出た。彼女は泣いているのである。
窓を透して射し込んでいた幽かな夕暮れの光さえ今は全く消えてしまって室内はようやく闇となった。その闇の中で聞こえるものは妹の泣き声ばかりである。
その時静かに襖が開いて尼が一人はいって来た。黒い法衣に白い被衣。キリスト様とマリヤ様に仕えるそれは年寄りの尼であった。
「まあこのお部屋の暗いことは。灯火を点けないのでござりますね。……お祈りの時刻が参りました。灯火をお点けなさりませ」
二
「はい」
と久田姫は立ち上がった。そろそろと龕の前まで行きカチカチと切り火の音をさせ火皿へつつましく火を移した。黄金の十字架は燦然と輝きキリストのお顔もマリヤのお顔も光を受けて笑ましげに見える。
年寄りの尼を真ん中にして久田姫と柵とは龕の前にひざまずいた。
尼は恭しくお祈りを上げる――「悩み嘆く魂のために安らけき時を与え給え。