Japanische Klassiker mit Furigana
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きかくとさんぞくととのさま
其角と山賊と殿様
山本 周五郎
Lesen Sie 其角と山賊と殿様 (きかくとさんぞくととのさま) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 4.948 Zeichen · 10 Bildschirme
「これこれ、この夜陰にいずれへ参られる」
「はい、実は急病人でございまして、医者の許へ参る途中でございます」
其角が伸上って、助けてくれ! と叫ぼうとしたとたん、駕籠の垂の間から、すっと白刃が出て、其角の脾腹へぐいと差しつけられた。あっと言っても刺殺さん気配――其角はそのまま身動きもできなくなった。
こうして、三五度も木戸や番所で咎められながら、遂に救いを呼ぶ機会もなく、やがて一刻あまりも乗り続けた後、駕籠はどしんと荒々しく下へ置かれた。
「出ろ!」
と言う声に、其角が恐る恐る駕籠を出て見ると、鬱蒼と常緑樹の茂った深山のような中で、向うから髭だらけの面をして松火を持った、異装の荒くれ男が二人やってきた。そして茫然としている其角の手を両方からひっ掴むと、物も言わずに引摺って行く。
樹立をぬけると立派な玄関構え、そこにも熊の皮の胴巻を着け、山刀をぼっこんだ大男がいて其角を受取った。玄関から廊下へ出て、幾曲りもした後、やがて煌々と燈火の輝く大広間へ導かれた。そこは岩屋の一部へ造りつけたと見え、正面はぐっと刳込んだ洞窟で、槍、長巻、山刀、矢鉄砲、掛矢なんど、見るも恐ろしい武器が置並べてある。