Japanische Klassiker mit Furigana
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はつつぼみ
初蕾
山本 周五郎
Lesen Sie 初蕾 (はつつぼみ) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 17.525 Zeichen · 35 Bildschirme
「半之助さまには申し訳がないけれど」
お民はそう考えながら、はま女の頼みにこちらから縋り付く思いで、
「立ち歩きのできるまで」
梶井家にとどまることになった。
六月に誕生日を迎え、秋には小太郎は歩きはじめた。しかし冬になっても、その年が暮れても、約束の期限について家人からなんの話もなかった。そればかりでなく、年が明けると良左衛門が素読を教えようと云いだし、毎日きまって少しずつ稽古をして呉れるようになった。……習字は千字文を続けていたし、夜には縫物の手ほどきも受けた。小太郎は麻疹を軽く済ませたあと、よく肉付いて丈夫に育だち、眉つき口もとなど、びっくりするほど半之助に似はじめた。――もし御夫婦に気づかれたらどうしよう、そういう心配はあったけれど、お民はそれが身のふるえるようなよろこびで、人眼のない処では我知らず抱き緊めて、いやがるほど頬ずりをせずにはいられないのだった。
こうして月日は経っていった。三年となり四年となった。とりかわした約束はそのままで、どちらからも触れようとせず、お民はいつか梶井の家族と同じ気持で、明け昏れを送っていた。……小太郎は六つのとし疱瘡にかかった。