Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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わかれたるつまにおくるてがみ

別れたる妻に送る手紙

近松 秋江

Lesen Sie 別れたる妻に送る手紙 (わかれたるつまにおくるてがみ) von 近松 秋江 (ちかまつしゅうこう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 51.985 Zeichen · 103 Bildschirme

Aozora Bunko

私にはまだ自分で待合で勘定を借りた経験はなかった。お宮を早く帰せば銭も嵩まないと分っていたが、それは出来なかった。又仮令これ限りお宮を見なくなるにしてもお宮のいる前で勘定の不足をするのは尚お堪えられなかった。そう思って先刻から、一人で神経を悩ましていたが、ふっと、今日は、長田が社に出る日だ、彼処に使いを遣って、今日は最う十七日だから、今月書いた今までの分を借りよう。――それはお前も知っている通りに、始終行っていたことだ。――と、そう気が付いて、手紙の裏には「牛込区喜久井町、雪岡」と書いて車夫に、彼方に行ってから、若しも何処から来たと聞かれても、牛込から来た、と言わしてくれと女中に頼んだ。

暫時して車夫は帰って来たが、急いで封を切って見ると、銭は入っていなくって唯、

「主筆も編輯長もまだ出社せねば、その金は渡すこと相成りがたく候。」

と、長田の例の乱筆で、汚い新聞社の原稿紙に、いかにも素気なく書いてある。私は、それを見ると、銭の入っていない失望と同時に「はっ」と胸を打たれた。成程使者が丁度向に行った頃が十二時時分であったろうから、主筆も編輯長もまだ出社せぬというのは、そうであろう。