Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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わかれたるつまにおくるてがみ

別れたる妻に送る手紙

近松 秋江

Lesen Sie 別れたる妻に送る手紙 (わかれたるつまにおくるてがみ) von 近松 秋江 (ちかまつしゅうこう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 51.985 Zeichen · 103 Bildschirme

Aozora Bunko

そうして薄暗くなって行く室の中では、頭の中に、お宮の、初めて逢った晩のあの驚くように長く続いた痙攣。深夜の朧に霞んだ電灯の微光の下に惜気もなく露出して、任せた柔い真白い胸もと。それから今朝「精神的に接するわ」と言った、あの時のこと、その他折によって、種々に変って、此方の眼に映った眉毛、目元口付、むっちりとした白い掌先、くゝれの出来た手首などが明歴と浮き上って忘れられない。……それが最早居なくなって了うのだと思うと、尚お明らかに眼に残る。

私は、何うかして、此の寂しく廃れたような心持を、少しでも陽気に引立てる工夫はないものか、と考えながら何の気なく、其処にあった新聞を取上げて見ていると、有楽座で今晩丁度呂昇の「新口村」がある。これは好いものがある。これなりと聞きに行こう、と、八時を過ぎてから出掛けた。

そういうようにして、お宮に夢中になっていたから、勝手に付けては、殆ど毎日のように行っていた矢来の婆さんの家へは此の十日ばかりというもの、パッタリと忘れたように、足踏みしなかったが、お宮がいなくなって見ると、また矢張り婆さんの家が恋しくなって、久振りに行って見た。