Japanische Klassiker mit Furigana
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ひみつ
刺青・秘密
谷崎 潤一郎
Lesen Sie 刺青・秘密 (ひみつ) von 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 32.935 Zeichen · 66 Bildschirme
「ええそうです、私はお母さんの忰です。忰の潤一が帰って来たんです」
が、母はじーっと私の姿を見詰めたきり黙っている。姐さん冠りの下から見える白毛交りの髪の毛には竈の灰が積っている。頬にも額にも深い皺が寄って、もうすっかり耄碌してしまったらしい。
「私はもう長い間、十年も二十年もこうして忰の帰るのを待っているんだが、しかしお前さんは私の忰ではないらしい。私の忰はもっと大きくなっている筈だ。そうして今にこの街道のこの家の前を通る筈だ。私は潤一なぞと云う子は持たない」
「ああそうでしたか。あなたは余所のお媼さんでしたか」
そう云われて見れば成程そのお媼さんは確に私の母ではない。たといどんなに落ちぶれたにしても、私のお母様はまだこんなに年を取っては居ない筈である。―――だがそうすると、一体私のお母様の家は何処にあるのだろう。
「ねえお媼さん、私は又わたしのお母さんに会いたさに、こうしてこの街道を先から歩いて居るんですが、お媼さんは私のお母さんの家が何処にあるか知らないでしょうか。知っているなら後生だから教えて下さい」
「お前さんのおふくろの家かい?」
そう云って、お媼さんは眼脂だらけな、しょぼしょぼとした眼を見張った。