Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ひみつ

刺青・秘密

谷崎 潤一郎

Lesen Sie 刺青・秘密 (ひみつ) von 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 32.935 Zeichen · 66 Bildschirme

Aozora Bunko

「ああお母さん、お母さんでしたか。私は先からお母さんを捜していたんです」

「おお潤一や、やっとお母さんが分ったかい。分ってくれたかい。―――」

母は喜びに顫える声でこう云った。そうして私をしっかりと抱きしめたまま立ちすくんだ。私も一生懸命に抱き附いて離れなかった。母の懐には甘い乳房の匂が暖かく籠っていた。………

が、依然として月の光と波の音とが身に沁み渡る。新内の流しが聞える。二人の頬には未だに涙が止めどなく流れている。

私はふと眼を覚ました。夢の中でほんとうに泣いていたと見えて、私の枕には涙が湿っていた。自分は今年三十四歳になる。そうして母は一昨年の夏以来この世の人ではなくなっている。―――この考が浮かんだ時、更に新しい涙がぽたりと枕の上に落ちた。

「天ぷら喰いたい、天ぷら喰いたい。………」

あの三味線の音が、まだ私の耳の底に、あの世からのおとずれの如く遠く遥けく響いていた。