Japanische Klassiker mit Furigana
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しせい
刺青
谷崎 潤一郎
Lesen Sie 刺青 (しせい) von 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 5.651 Zeichen · 12 Bildschirme
顔を見るのは始めてだが、お前の足にはおぼえがある。―――お前に見せてやりたいものがあるから、上ってゆっくり遊んで行くがいゝ」
と、清吉は暇を告げて帰ろうとする娘の手を取って、大川の水に臨む二階座敷へ案内した後、巻物を二本とり出して、先ず其の一つを娘の前に繰り展げた。
それは古の暴君紂王の寵妃、末喜を描いた絵であった。瑠璃珊瑚を鏤めた金冠の重さに得堪えぬなよやかな体を、ぐったり勾欄に靠れて、羅綾の裳裾を階の中段にひるがえし、右手に大杯を傾けながら、今しも庭前に刑せられんとする犠牲の男を眺めて居る妃の風情と云い、鉄の鎖で四肢を銅柱へ縛いつけられ、最後の運命を待ち構えつゝ、妃の前に頭をうなだれ、眼を閉じた男の顔色と云い、物凄い迄に巧に描かれて居た。
娘は暫くこの奇怪な絵の面を見入って居たが、知らず識らず其の瞳は輝き其の唇は顫えた。怪しくも其の顔はだん/\と妃の顔に似通って来た。娘は其処に隠れたる真の「己」を見出した。
「この絵にはお前の心が映って居るぞ」
こう云って、清吉は快げに笑いながら、娘の顔をのぞき込んだ。
「どうしてこんな恐ろしいものを、私にお見せなさるのです」