Japanische Klassiker mit Furigana
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げきだん「わらうようま」
劇団「笑う妖魔」
山本 周五郎
Lesen Sie 劇団「笑う妖魔」 (げきだん「わらうようま」) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 8.705 Zeichen · 18 Bildschirme
五郎はそう云って立ち上った。そして凡そ十分程もたって戻ってきた時には、五郎の顔は隠しきれぬ不安に震えていた。
「父さん、野河さんにはいませんよ」
「――いないッて?」
「野河さんでは一週間ほど前きたっきりだと云ってます。茉莉さんも今日学校で別れたきり会わないんですって」
市造氏の眉が歪んだ。
「それから中野に聞いたんですが、出かける前に男の声で電話がかかってきたそうですよ」
「男の声だと、――?」
椅子の腕木を掴んでいた市造氏の手が、電気にうたれたように震えた。……長男の一郎で苦い経験がある。男の声の電話、そして野河へ行くといって出た嘘――もしや一郎のように不良の仲間にでも誘惑されたのではあるまいか。何よりも先に思うのはそれだった。
「どうしましょう」
「とにかく、もう少し待ってみよう」
そして待った。
十時を打ち、十一時を打った。ゆき子は帰ってこない。五郎は何度も――警察へ頼んだら、と云おうと思った。しかし曾て兄の事で不面目な世評を蒙った父が、またしても警察の手を借りるという事はどんなに苦痛であるかを考えると、とても云い出す気にはなれなかったのである。
「もう寝よう」